背伸びした恋 | ナノ








『でも、蘭丸くんに子供扱いされるの、なんか嫌じゃないんだよなぁ…』

『変だよね』

あの時の、祐梨先輩の笑顔が色濃く頭に残っている。

本当に自惚れてもいいんだろうか?あんな事を言われたら期待してしまうだろ。

「はぁ…」

俺はなんでこんなにも昨日の事を思い出してしまうんだ。

いままでこんなことなかったのに…。

「どうした、霧野」

パッと視線を上げると、心配そうな表情をした神堂がいた。

忘れていたが、そういえば教室だったな。

「わるい、なんでもないんだ」

「そうか?何かあったら、なんでも言ってくれ」

「あぁ…、ありがとうな神堂」

神堂の優しさに感謝しながらも、また物思いにふける。

あ、次の授業なんだったっけ。

「あ、そういえば、昨日の部活の後どうしたんだ?」

「部活の後?」

疑問気に神堂の方を向くと、何か思い出したかのように神堂は口を開いた。

「部活終わったら急いでサッカー棟を飛び出して行ったから気になってたんだ」

「あ、あぁ…」

そうだ、部活終わってから


、もしかしたら祐梨先輩が今日もあの場所にいるんじゃないかと思って、行ってみたんだ。

そうしたら、思ったとうりにいたから少し驚いた。

3年だし、受験勉強とかあるんじゃないのか?

でも南沢さんとかはまだ部活してるし、まだそこまでしなくても大丈夫なのかもな。

そこまで考えて、ふと思い出した。

そういえば、学校一緒だよな?なんでいままで気づかなかったんだろう。

食堂、屋上、図書室、廊下、どっかで1回ぐらい会った事があるだろう。

とは言っても結果論かもな。

「霧野!次移動教室に変更らしい。急ぐぞ」

「あ、あぁ!!」

神堂の言葉で我に帰り、机から教科書やノートやらをまとめてから席を立ち、移動教室に向かった。



先を急ぎながらも、少し3年の教室に意識を向ける。

もしかしたら会えないか、とか思った自分に思わず驚いた。

な、なんか女々しい気が…。

軽く頭を振って、気を紛らわしても、どこかもやもやしたままだった。

本当なんなんだよこれ。






今日は、なんか凄いと思った。

神堂が職員室によってから教室に行くからとの事だから、先に教室に帰る途中。

「祐梨先輩!!」

階段を少し進んだその先に、リボンをつけたサイドポニーテール。

すっかり目に焼き付いているこの姿を見間違えるわけないだろう。

見た瞬間、思わず名前を呼んでしまった。

「蘭丸…くん?」

祐梨先輩は振り返って俺を見ると、少し驚いたような表情をしていた。

「どうしたの?」

「え、あ…」

考えも無しに呼んだ物だから、いざそう聞かれると何を言えばいいのやら。

「あ、あの!今日も行きますか?あの場所」

「うん。」

「だったら…」

今日も行ってもいいですか?

なんでその言葉が最初に出てきたかわからない。

でも

「もちろん!」

嬉しそうに笑う祐梨先輩を見ていると、そんなことにも気にならず、ただ嬉しさが生まれた。

「それじゃあ、また後でね」

そう言って廊下を進んで行く祐梨先輩を見送った後、俺の口角は少し緩んだ。

さっきのもやもやは何処に行ったんだろう。

今はただ、嬉しくて仕方がない。





後で、がち遠しい


(何かいいことあったのか、霧野?)
(え、)
(嬉しそうな表情してるからな)
(まぁな)






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