背伸びした恋 | ナノ








「蘭丸くん、か」

すっかり寄り道するのが当たり前になった広場で、ボソッと呟いた。

蘭丸くんにも話したけど、ある出来事があって、この広場にくるようになった。

蘭丸くんと会ったあの日、いろいろ考えこんじゃって、ぼんやりと夕日を眺めてた。

沈んでいく夕日、消えていく光。

どこかしら、気分も冷めていた。

考えていた事にも嫌気がさして、どうしようもなく頭がぐちゃぐちゃになっていた。

その時、

「すいません、そのボール」

凛とした声が響いて、そちらを向くと、鮮やかなピンク色の髪、綺麗なエメラルド色の瞳。

何故か引き込まれた、ぐちゃぐちゃだったはずの頭は、真っ白になっていた。

夕暮れの風が髪を弄ぶ。

この時は、不思議と、時が流れるのが長く感じた。

ふと、我に帰ると、私の足元には白黒のサッカーボール。

気づかなかったけど、私の方まで転がってきてたんだ。

そっと手にとって、近くに駆け寄って行った。

「自主練習なんて偉いね。霧野蘭丸くん」

「え?」

私が言うと、目の前の少年。蘭丸くんは驚きの色を見せていた。

蘭丸くんの事はみんな知っているだろう。

だって、あのサッカー部のファーストチームのメンバーで、顔も整っていて、性格もいい。

友達からもよくそうゆう話を聞いていた。

あとは、サッカー部の知り合いとか。

改めて見ると、本当に顔整ってるなぁ。

同じ中学だけど、正面で見たことはないし。

「よろしくね」

手を差し出すと、蘭丸くんも握り帰してくれた。

その後は私がここによく来るようになった時の話をしたりした。

私が話していると、蘭丸くんは時々呆れたように、困ったように笑ったりした。

なんか、保護者みたいな。


そう言えば、私はしゃべらなかったら中3に見えるけど、しゃべったら子供っぽいから喋るな、って言われたな。

それでも、蘭丸くんが笑ってくれると、なんだか嬉しくて、心が暖かくなる感じがした。

「俺が送りますよ」

帰り際に、私が送ると言ったときに蘭丸くんはその言葉を遮るように言った。

その時、やっぱり男の子だな、って思った。

それでも、少しからかったら拗ねたような顔をしているのを
見たら、やっぱり可愛いな、と思ってしまう。





男前、愛い後輩


今日も来てくれないかなぁとか、

何処か心を躍らしている私がいた






nextあとがき






prev next