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やっと、やっとだ…。

手の中で鮮やかに輝く、紫色の石を握りしめた。

これが俺の欲しかったもの、俺の求めていた物…。

自然と口角が上がる。

ああ、なんだ、単純な事だったんじゃないか。

力か、力があればよかったのか。

今なら、迷う事なく会いに行ける。







「え、明日帰ってくるの!?」

深夜の自室にて、驚いたように叫ぶと、円堂は電話越しに笑っていた。

円堂達が遠征にでてからしばらくたった、ようやく帰ってこられるらしい。

遠征、か。

円堂の言う雰囲気や、風丸のあの時の雰囲気からしてただの遠征と言うわけでは無かったんだろうな。

何はともあれ、無事帰ってきてくれてよかった。

電話を切って、ベッドに倒れ込んだ。

明日は雷門中まで行ってみようか。

もしかしたら…風丸も来るかもしれないし。

あの日以来、風丸とは会ってないし、連絡もとっていない。

今どこで、何をしているんだろうか。

今でも脳裏に焼き付いている、あの日の風丸の表情。

深く自分を追い詰めていて、悲しそうな目をしていた。

なんで気づけなかったんだろう、私は今まで何をやっていたんだ。

会わなければいけない、本能的に察している。

会ってもう一度話さなきゃいけない。

そう決めて、私は眠りについた。




目が覚めてから、準備を済ませて家を出た。

行き先はもちろん雷門中。

ひさしぶりに皆に会えるという嬉しさと、風丸に会えるんじゃないかという期待から、自然と足が速まる。

住宅地を抜けながら走っていると、急に腕を引かれて、塀に押し付けられた。

「つッ」

あまりにも急な事で頭は回らないし、背中が痛む。

何より、恐怖が身体を支配していて、顔を上げられない。

怖い怖い怖い怖い…。

肩を捕まれていて動けない、この状況がなおさら私の恐怖を駆り立てていた。

ギュッと目をつむっていると、目の前の人物が口を開いた。

「祐梨」

その声に、思わず思考が止まる。

間違えるはずがない、ずっと聞きたかった人の声だった。

恐る恐る、顔をあげると予想通りの人が立っていた。

「かぜ、まる…」

会いたかった、探していたはずの人物に出会えた。

でも、なんでだろう。

なんで、こんなにも胸騒ぎがするんだろう。

呆然としている私を風丸が抱きしめてきた。

嬉しいはず、なのに、なのに…。

何かが違う。



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