7「風丸!」
走って風丸の側までいき、しっかりと風丸の腕を握った。
離してはいけない、そう思いながら。
いろいろな心情が入り混じって、私の腕は震えていた。
振り払われるかもしれない、そう思うとひたすら怖い。
お互い無言の状態か続き、緊張の空気が続いて、私の緊張は頂点に達していた。
「か、かぜま…」
私が口を開いたときに、急に腕を引かれた。
目の前には風丸の肩、何がおきたのか一瞬わからなかった。
「祐梨…」
耳元で風丸の声が響いた。
本当に久しぶりだった、こうやって抱きしめられるのも、私の名前を呼んでくれるのも。
緊張が急に抜けた私は足の力が抜けたけど、風丸が支えてくれて何とか立ってる状態だ。
「なんで、だろうな…」
風丸が、呟いた。
「俺があんな事言ったのに、今祐梨に会いたくて仕方なかった」
ぎゅうっと、風丸の腕の力が強くなった。
その言葉に、何故か涙がでてきそうになった。
「俺さ、弱いな…」
心なしか、風丸の声が震えていた。
「円堂から電話があった。」
「…」
「何が…、あったの?」
今の風丸を見ても、電話の時の円堂の声色からしても、ただ事ではないのがわかる。
なにより、風丸がサッカーをやめるなんて。
「俺さ…、もうダメなんだ…」
弱しく、風丸が口を開いた。
「もう、強くなれないんだよ…」声が震えていた。
「な、んで…?なんでそうなるの…?」
「俺は、あいつらに、勝てる気が全然しないんだ。もう、何をやっても…」
「そんな事、ないんじゃ、」
「力の差が、わかったんだよ…」
そうゆうと、風丸はゆっくり離れて私を見た。
風丸の目は、相変わらずのように曇りかかったような目だった。
「大丈夫だ、よ…。また頑張れば…。今までだって、頑張って来たからここまでこれたじゃん…」
だからそんな風に、悲しそうに笑わないでよ。
「なぁ、祐梨」
「な、に…?」
「俺さ、自分を守る為に、祐梨にあんな事言ったんだ…」
「どうゆう…事?」
聞いてはいけない気がした。
聞いたら、もう取り返しのつかない事になってしまいそうで。
「もう、どうしようも無くなった。こんな弱い俺を、祐梨に見られたくなかった。」
驚いて、風丸を見た。
「祐梨を守ってやれるぐらい強くなりたかった。祐梨の笑顔を…。なのに、俺は祐梨を傷つけた…」
涙が、頬を伝う。「だから、俺は、あの日、」
視界が歪む。
「祐梨の横に、いる事を止めた」
嫌だ、止めて…
「いや、逃げたんだ、」
そんなに、自分を追い込まないでよ…
いや、違う…、もしかして、私が、風丸を追い詰めてたの?
「だから、もう、」
さ よ な ら だ ――――。風丸の言葉は、嫌な程に耳に響いた。
風丸は最後、泣いていた。
離れていく、もう、追いつけないほど。
そう思って、私は急いで風丸の腕を掴んだ。
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