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「風丸!」

走って風丸の側までいき、しっかりと風丸の腕を握った。

離してはいけない、そう思いながら。

いろいろな心情が入り混じって、私の腕は震えていた。

振り払われるかもしれない、そう思うとひたすら怖い。

お互い無言の状態か続き、緊張の空気が続いて、私の緊張は頂点に達していた。

「か、かぜま…」

私が口を開いたときに、急に腕を引かれた。

目の前には風丸の肩、何がおきたのか一瞬わからなかった。

「祐梨…」

耳元で風丸の声が響いた。

本当に久しぶりだった、こうやって抱きしめられるのも、私の名前を呼んでくれるのも。

緊張が急に抜けた私は足の力が抜けたけど、風丸が支えてくれて何とか立ってる状態だ。

「なんで、だろうな…」

風丸が、呟いた。

「俺があんな事言ったのに、今祐梨に会いたくて仕方なかった」

ぎゅうっと、風丸の腕の力が強くなった。

その言葉に、何故か涙がでてきそうになった。

「俺さ、弱いな…」

心なしか、風丸の声が震えていた。

「円堂から電話があった。」

「…」

「何が…、あったの?」

今の風丸を見ても、電話の時の円堂の声色からしても、ただ事ではないのがわかる。

なにより、風丸がサッカーをやめるなんて。

「俺さ…、もうダメなんだ…」

弱しく、風丸が口を開いた。

「もう、強くなれないんだよ…」声が震えていた。

「な、んで…?なんでそうなるの…?」

「俺は、あいつらに、勝てる気が全然しないんだ。もう、何をやっても…」

「そんな事、ないんじゃ、」

「力の差が、わかったんだよ…」

そうゆうと、風丸はゆっくり離れて私を見た。

風丸の目は、相変わらずのように曇りかかったような目だった。

「大丈夫だ、よ…。また頑張れば…。今までだって、頑張って来たからここまでこれたじゃん…」

だからそんな風に、悲しそうに笑わないでよ。

「なぁ、祐梨」

「な、に…?」

「俺さ、自分を守る為に、祐梨にあんな事言ったんだ…」

「どうゆう…事?」

聞いてはいけない気がした。

聞いたら、もう取り返しのつかない事になってしまいそうで。

「もう、どうしようも無くなった。こんな弱い俺を、祐梨に見られたくなかった。」

驚いて、風丸を見た。

「祐梨を守ってやれるぐらい強くなりたかった。祐梨の笑顔を…。なのに、俺は祐梨を傷つけた…」

涙が、頬を伝う。「だから、俺は、あの日、」

視界が歪む。

「祐梨の横に、いる事を止めた」

嫌だ、止めて…

「いや、逃げたんだ、」

そんなに、自分を追い込まないでよ…

いや、違う…、もしかして、私が、風丸を追い詰めてたの?

「だから、もう、」


さ よ な ら だ ――――。


風丸の言葉は、嫌な程に耳に響いた。

風丸は最後、泣いていた。

離れていく、もう、追いつけないほど。

そう思って、私は急いで風丸の腕を掴んだ。





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