4家までの距離が、いつも以上に長く、長く感じた。
打ち付ける雨は、次第に量が増えていき、音も大きくなっていた。
それでも構わずに、ただ呆然としながら歩いていた。
視界が煙っているのは、雨のせいか、他の理由か。
『俺と、別れてほしい』
頭の中に、いつまでこだましていた。
その度に、涙が溢れた。
思い出してしまう、風丸が笑っている顔を。
すごい優しい瞳で、祐梨、と私の名前を呼んでくれた風丸
会いたかった、と強く抱きしめてくれた風丸
好き、やっぱり好き。
「嫌い、に、なんて、なれない…」
やっぱり会いたいよ、会いたい…。
自宅のドアを開けると、閑散とした空間が私を迎えた。
今日は両親がいなくてよかったと思いながら靴を脱ぎ、部屋へ行った。
濡れている事なんて気にする事なく、ベッドに倒れこんだ。
真っ暗なこの空間、今になって、寒さをジワジワと感じ始めた。
私がいつも寒そうにしていると、まるで世話がやける子供を見ているように笑った風丸。
その後な、何かしらして寒さを柔らげてく
れた。
風丸が横にいてくれるだけで、私は幸せだった。
風丸の優しさが暖かかった。
でも、もう風丸と一緒にいる事はできないんだよね。
その事をあまりよく実感できていない。
ベッドのそばにある窓を除くと、登校するときに風丸が待ってくれていた風景が思い出される。
朝が弱い私に、いつも早くしろっとあの場所から叫んでたっけ。風丸が待っていてくれるのが嬉しくて、いつも朝が来る、楽しみだった。
ぼんやりとしながら窓の外を眺めていた。
楽しかった、あの時の幻影を思いながら。
目を閉じると、また涙が一筋流れた。
知らないうちに眠っていたようで、遠くでは空がうっすらとオレンジ色に染まり初めていた。
今日風丸はまた遠征に行く。
それでも、私はいつものように窓の外をみてしまう。
来るはずのない、風丸の姿を。
まちぼうけのあさ朝になっても、あなたが来るはずがないのにneytあとがき
prev|
next