3「悪いな、こんな朝早く。」
早朝、少し日が昇り始めたばかりで空がぼんやりと明るい。
そんな時、私は河川敷に来ていた。
それは昨日の夜、風丸からのメール。
【明日の朝、少し会えないか?】
もちろん承諾して、今ここにいる訳だ。
「いいよ、全然」
私よりも早く来ていた風丸の横に腰を下ろした。
今まで運動を何かしらしていたのか風丸の頬からは少し汗が流れていた。
「朝弱いのに、無理しなかったか?」
「確かに朝は弱いけど、風丸の頼みとなったらへっちゃら」
ふにゃっと笑うと、風丸が優しく頭を撫でてくれる。
「行く前に、祐梨に会いたかったんだ。なんでだろうな」
自嘲気味に風丸は笑いながら言ったけど、私は嬉しかった。
「私は嬉しいよ。風丸が会いたいって思ってくれて」
こんな私でも、風丸の役に立てるのなら、嬉しくないはずはない。
それに、私も風丸に会いたかったし。
そんな事を思っていると、ギュウッと抱きしめられた。
やっぱり風丸に抱きしめられるのは好き。
なんか、安心する。
「風丸、あったかい」
「祐梨もあったかいよ」
朝の風は冷たくて、ここまで来る時は寒さに耐えるのが大変だったけど、今はホカホカとしていた。
「頑張ってね?」
「あぁ!帰ってきたら、また会えるか…?」
「もちろん、」
帰ってきたら、まずはお疲れって言って。
それから、試合の話し聞こう。
そう言ったら、「だったらなおさら頑張らねーとな」と風丸は笑った。
「それじゃあ、時間だから。」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
エナメルの鞄をさげ、集合場所である雷門中に向かう風丸に手を振りながら見送る。
帰ってきたら、何を話そうか、一緒にサッカーでもしようか、とか、いろいろ考えながら朝日が昇るのを見つめた。
今日もいい天気だ、いい事あるかな?と、子供のような事を考えながら。
でも、いつまでも、いい事は続かない
私はもうすぐ知る事になる。
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