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「ずっと会いたかった」

風丸の声が、妙に響いて聞こえた。

「風丸、どうしたの…?」

風丸から離れて、風丸を見た。

風丸は少し複雑な表情をしながらも、私を見ていた。

「俺、弱い自分が嫌だったんだ。」

風丸は目を少し伏せながら呟いた。

「力が欲しかった。弱い自分をかえる力が…誰にも負けない力が…。」

「か、風丸は弱くないよ…」

「そんなわけない!!!」

たたき付けるように叫んだ風丸に、思わず身を固めた。

「俺は嫌だった。俺が弱いから祐梨を傷つけた。だから祐梨の前から姿を消した…」

あの時の事を思い出しているのか、風丸の拳は強く握られていた。

でも次の瞬間、苦しそうな表情は一変して、風丸の口には笑みが浮かんだ。

「そんな時、ある人が俺に力を与えてくれたんだ…。この、エイリア石を…」

そう言って、首にかけていた紫色に光石を握り締めていた。

その石は、怪しく、綺麗に輝いていた。

「凄いんだ、エイリア石は…。俺の内から力があふれてくるんだ…」

嬉しそうに笑う風丸に、私は言葉を失っていた。
これが…、この人が、私が大好きだった風丸…?

「エイリア石があれば俺は強くなれる!求めていた物が全て手に入るんだ!」

こんなの…

「祐梨。俺は強くなったんだ!だから、俺はお前を迎えに来た。もう俺が弱いせいで祐梨を傷つける事もない」

急に、鼻の奥のほうがツンとしてきた。

どこに行ったの?私の知ってる風丸は…、どこに…。

風丸は、こんな人じゃない…。

「これから、雷門中で雷門と試合をする。そして、円堂達にこの力の素晴らしさを証明するんだ」

「!!」

風丸の方をみると、嬉しそうに笑っている。

でも、その笑顔は私の知る、風丸の笑顔じゃない。

力に溺れている、そんな笑顔だった。

「これでやっと、円堂に勝つ事ができる。ずっと勝てなかったあいつに…!!だから、一緒にい…」

パシンッ

風丸の言葉が終わる手間に、渇いた音が響いた。

私の手が風丸の頬を叩いた音だ。
驚いたように目を見開いている風丸に対して、私の目からは涙が溢れていた。

「目を覚ましてよ…風丸。私は風丸を弱いだなんて思った事ない…いつも頑張ってる風丸が…失敗しても諦めずに何度も挑戦している風丸が…とってもかっこよかった。そんな風丸が大好きだった…。今の風丸は、力に溺れてる…」

ただただ、流れていく涙を拭う事も忘れて、風丸に叫んだ。

「風丸は、本当に大切な物を無くしてるよ。力なんて、人から与えられる物じゃない…。自分で頑張って手にいれるものじゃない!!!それを教えてくれたのは…、風丸…だったのに」

貴方はどこへ行ったの…?

消え入りそうに呟いた言葉は、貴方に届いたかな…

気づいた時、私はその場から走りさっていた。




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