6薄明かりがカーテンから差し込むのが、ぼんやりと視界に写る。
もぞもぞと布団から顔をだし、近くに置いてある携帯を開き時間を確かめると、いつもよりも少し早い時間をさしていた。
どうやら、寝坊の心配はなさそうだ。
上体を起こして、相変わらずのようにカーテンを開けて、庭先の道を見つめる。
やっぱり、探してしまうんだ、風丸の姿を。
そもそも、風丸は遠征に出ているからいるはずがない。
それに、…。
もう、別れたし…。
思い返すと、視界が歪んできて頬を涙が伝わった。
早く受け入れないといけない現実なのに、なかなか受け入れられない。
頬を濡らしていた涙を拭って、ベットから降りて制服に着替え始めた。
学校には行きたくないな…、行ったら思い出しちゃうじゃん。
楽しかった時の事、一緒に過ごした場所、思い出が多過ぎるよ。
憂鬱な気分のまま家の扉を空けた。
いつもは二人で通っていたこの道も一人になってしまった。
この場所は、こんなにも広かっただろうか。
こんなにも静かだっただろうか。
そういえば、私がよく寝坊して慌てて走って行った事もあったなぁ…。
『たく、祐梨が寝坊するから遅刻ギリギリだぞ』
『しょーがないじゃん、朝苦手なの』
風丸は世話のやける子供を見ているような表情をしながら私の手を引いてくれた。
『風丸!?』
『ほら、急ぐぞ』風丸が手を引いてくれるとペースが上がったけど、風丸は元陸上部、足の速さは半端じゃない。
それでもだいぶペースは落としてくれていたんだろうけど。
『は、はやいっ!』
『遅刻するのとどっちがいい?』
『ッ〜、こっちがいい』
確かに、走るのはエライけど、風丸が手を握って走ってくれるのは嬉しかった。
そんな事を思い出しながら行っていると、急にふらついて、思わず壁にもたれかかった。
あの日雨に濡れたまま寝たせいか、ずっと調子が優れない。
微熱があるのか、ぼーっとしている精神のまま、また学校に向かって歩きだした。
学校の授業が終わって放課後、鞄の中をみると、携帯が光を発していた。
開いて見ると、ある人からの電話だった。
何で、電話なんか?
疑問に思いながらも電話にでた。
「もしもし、円堂?どうかしたの」
円堂からの電話なんかそうそうないし、ましてや遠征中なのに、何なんだろうと思い耳を傾けていた。
《……。》
円堂の言葉を聞いた瞬間、思わず教室を飛び出し、学校をでていった。
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