下等種族な名前にこうも惚れ込むとは。…おれはどうかしている。 「アーロンさん!」 名前に出会ったのは数ヶ月前、アーロン帝国を築こうと訪れた島で生贄として捧げられたときだった。 こともあろうにこの島の下等種族どもは金などなく、何でも生贄を捧げりゃいいというくだらねぇ思考の輩だった。 こんな島は支配下に入れるのも反吐が出る。生贄だけを連れて島を沈めた。 「アーロンさん?」 「ん?何だ」 「どうしたんですか?いつも以上に険しいお顔です」 「ふん、何でもねぇ」 なら良いのです、と座っているおれの足の上に座る。 名前の小さな背中を見ていると人間の脆さがよくわかる。 少しでも触れたら簡単に死ぬんじゃねぇか? 「?!」 ガラにもなく出来る限り優しく抱き締めてやる。 「あ、の…」 「黙ってろ」 「…はい」 抱き締めている腕に名前の手が重なる。…小せぇ。 「…名前」 「はい、アーロンさん」 そっと。 (あいしてる) (なんて、言えねぇよ) (このおれが、こんなに人間に惚れ込むなんてな) 「??(具合悪いのかしら、アーロンさん)」 |