ただのんびりと過ごしたかっただけなのに、いつもこのオッサンに邪魔される。


「…名前、」


ああ、どうしたらこのオッサンを海へ放り投げることができるのかしら!どう頑張っても力じゃ適わないし、いっそのことこの小さい船を転覆させてやろうか。


「名前」

「あら何かしらジュラキュールさん」

「そんなに熱く見つめられると疼くのだが」

「一回海に飛び込んで頭を冷やしてちょうだい」

「…ふむ。ならば熱冷ましついでに泳ぐとするか」

「…え?」


グイッ
と名前の腕が掴まれ、

バシャッ…

波飛沫が青空に広がった。








「あーもう!あんたのせいでびしょびしょ!べたべた!どうしてくれるの」

「頭を冷やせと言ったのは誰だ?それにしても濡れている名前も美しい」

「なっ!!?」

「そのままだと寒いだろう。こっちへ来い。暖めてやろう」

「その発言は怪しいです。セクハラお断り」

「そうか…」


ミホークは羽織りを脱ぎ、帽子とまとめて置いた。


「…あんたには恥じらいという感情がないのかしら」

「ん?何だ、見とれているのか」

「(何処をどうしたらそんな風に聞こえるの?)…くっしゅん!うわ、急に寒くなってきた」

「そろそろ日が落ちるからな。濡れたままだと風邪をひく。服を脱いでこっちに

「お断りします!」

…そうか。ならば仕方ないな」


そう言ってミホークは椅子に腰掛け、腕組みをして目を閉じた。
残された名前は服を出来る限り絞り、早く乾くようパタパタと動かす。


「冷た…っ」


水分を含んだ服を乾かそうとすると冷たい風。四方八方からも夜風が吹き付ける。


「あああ今日は家でゆっくりしたかったのに!寒いし最あくあぁあ?!」

「少しは黙れないのか?」


いつの間にか起きたミホークに抱き締められた。冷え切った名前の体にはとても熱く感じ…


「い、いつ起きたのよ(あったかい…)」

「さあな。それより、先程に比べ随分体温が下がっているようだが」

「誰のせいだと」

「…おれだな。すまない」

「…?!」
「詫びに暖めてやる」

「え、ちょ、どこ触って…!」

「潮の味がする名前もいいものだな」

「ゃ、やああ…っ!」



のんびりしたかったのに!




(もうあんなの嫌)
(散々喜んで泣いていたくせに何を言う)
(!! あーお風呂入りたい)
(おれが体の隅々まで洗ってやろう)
(何でそうなるの?!)



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