今日の狙いはあまーいあまいお菓子。予告状も出さずに盗んじゃうなんて私の美学に反するのだが致し方ない。







狙いはそれと心臓
(予告状はなしで参ります。)




台の上に置かれた甘い匂いのする「お菓子」に一歩、一歩忍び足で近づいてゆく。前後左右上下異常なーし!まあ、下に居たら踏み潰すけどね!何たって私、今スカートだかんね、原型がギリギリ把握できる程度に踏み潰してくれる…って違う違う、今は集中…はああああああああっ!




「怪盗なまえさん参上っいっただきまー…」




す!ときらり、と輝くフランシス特製ザッハトルテ…の前の段階のものに手を伸ばすが、私の手はエプロンを着用している1人の男に上からはたかれてしまった。






「…なまえちゃんつまみ食いは禁止。」




「…チッ」




「女の子が舌打ちしないの。」





まだ完成してないから、と言ってチョコのついたゴムベラの先を私に突きつけるフランシスは、まるでハウス!と言っているみたいである。は、ハウスって…いやいや私犬じゃないんだから、せめて、せめて、





「せめて哺乳類がいい…!」
「なまえちゃん、犬も哺乳類だからね。」





「…フランシスのけちー!いいじゃんじゃんじゃんつまみ食いの46つや283つ!」




「範囲広げすぎー、とりあえず完成するまで大人しくギルちゃんとオセロでもしなさい。」




「私とギルではオセロが成り立たないんですがどうすればいいですか先生、」と右手をびしっと挙げて言えば渋い顔をされる。…いや、だって私とギルがオセロしたらいつの間にかおはじき化してるんだよ不思議だよね!





「…じゃあアントーニョとあっちむいてほいでもしたら?」



「そんな命懸けなこと…?!!フランシスは私に死ねと言ってるのかな言ってるのかなあ?!!」




「いや、あっちむいてほいって、そんな命懸けなゲームじゃないよねなまえちゃん?!」




「いっ命懸けっすよ!!も、もしじゃんけんで負けたら…な、殴られるよ?!!」




「ええええええええええ」





じゃーんけーんほいっ、あっちむいて…ほいいいいい!!って無理やり左向かされたのさ何ヵ月か前。時間まだあるししようよとしたあの日を呪うね、もう二度としないっ心にきめた。





「じゃ、じゃあじゃんけんだけしたら?」




「じゃんけん単体になるとぐーで殴られるチョキで刺されパーで平手打「ごめん、お兄さんが悪かったね、」」




「うん、わかってくれたなら食べていいよねうへへいただきま…」




「それとこれは話が別。」




「ううううじゃああと10秒で完成させてフランシス!」




「ずいぶんな無茶ぶりだね無理だってば。」





それより普通逆だよね、バレンタインって女の子が男の子にあげる日だよね、毎年逆チョコなんだけど。というかなまえちゃんはキッチンに入ったら地雷がばーんなるから入んなや、ってアンちゃんに言われてるんだよね女の子としてどうだろう。かなり悔しく…ないか?





「…ねえフランシス」



「はーい?」





「こ、今年は私も作りたいから教えてくれる?」




「…なまえちゃん、」




「怪盗なまえは皆のハートも奪わなきゃならないかんね!」




「なまえの作った料理ならどれでもハート…いや心臓とられるっつーの」
「どういう意味だ不憫野郎。」





いつから居たのか、ギルが笑いながらおちょくってくるから、とりあえず睨んでみる。





「なまえちゃん」




「んっ?」




「とりあえず、クッキーからでも始めて…みる?」




「フランシス…!あ、ありがとう私頑張るよ!!」




「変なもんいれんなよ」
「ギルのには一年間使った上靴入れてやる。」






(じゃあお兄さんが終わってから…ってあああああ?!)
(うめえな!さすがフランシスだぜ!)
(ぐあああああずるいよギル!?私食べれなかったのに!!)





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