伊達主従
伊達政宗*片倉小十郎
離さない、渡さない、逃がさない。
どうしてあんな奴らにやらなければいけないんだ。これ以上俺から何を奪うつもりなんだ。
せっかく取った領地を取り上げられても、これだけは渡せない。
「殿、」
「俺のものだ」
「政宗様、」
「お前はやらない」
ギチリと背中に爪を立て、逃がさないように拘束する。
子供のように柔らかく頭を撫でられ、するりと指が頬を滑る。視線を合わせるように見遣ればふわりと笑った顔が視界に入る。
「心配しなくとも、ここに居ます」
「貴方様の傍に、いつだって」
心地良い声、自分のものである四肢五体。
「…当たり前だ」
首を包むように手を添え、徐々に力を加える。整わなくなる呼吸に気付き手を緩める。
「お前を誰かにやるくらいなら、俺が殺してやる」
きつくきつく、まるで縋り付くように抱きしめた。
離したくないのなら溶けてひとつになればいいと思うが、別々の個体で触れ合いたいと思うのもまた事実。そんな矛盾の中で今、生きているんだ。