上杉従兄弟
山浦光則→上杉定勝
※何がしたいのかよくわからない
「も、光則殿…くるし…」
「今日の定勝殿は僕のものなの」
腕の中に収めた主兼従兄弟殿。
最初は呼ばれたから渋々やって来たこの家だけれど、思ったより心地良くて今はもう気に入っている。
「上杉」と聞いていたから、もっと堅っ苦しくてぎすぎすした所かと思ってた。
「意味…わかんな、い」
「わかんないならそれでいいよ」
小さな、僕の主君。
格式を重んじ義を掲げるけれど、気を抜く所は抜いていて息は詰まらない。そんな彼がみんな好きなんだ。
だからその分敵は多い。
「ねぇ定勝殿、僕をどうして呼んだの?」
ふらふらと備後や安芸を巡っていたら突然やって来た武家からの使者。送り主は出羽米沢の藩主。顔も知らない、でも名前を聞いたら少しだけ思い出した。
―――上杉弾正大弼定勝
名門上杉の当主はそうだ、従兄弟なんだった。でもそんな人が、何故僕を呼ぶのだろうか。
「知りたい?」
「うん」
「…まだ、教えない」
不意に悪戯っぽく笑うものだから、思い切り頬を引っ張ってやった。思いの外柔らかく、伸びる。
「みふにょりとにょ…いひゃい」
「定勝殿の意地悪」
でも正直理由なんてどうでもいい。必要とされている、役に立てている、認められている。それだけで十分だから。