徳川と上杉
徳川家光+上杉定勝
自分にはもう父も母も兄弟も無くて、愛すべきは妻しかいないから肉親というものをほとんど知らないに等しい。その肉親を憎み合うのは、どんなものなのだろう。
「家光様、上杉は外様です。それも権現様と刃を交えようとした、いわば幕府の敵です」
上杉征伐、幻の戦、追撃の制止。
どれも自分は知らないけれど、その事実を背負う責任がある。過去はもう消すことが出来ないのだから。
「知ってるよ、で、ででも今は違う」
「貴方様の手足にはなれませんが、必要ならばいつだって貴方の力になります」
そう言えば彼は嬉しそうに笑う。
「「義があれば」でしょ?」
「もちろん、そこは曲げられませぬ」
「それでこそ上杉だた、お、叔父上が気に入っててた理由もわかる」
彼の言う叔父上は結城秀康様のことだろう。彼の父である大御所様も兄である秀康様に憧れ、好いて、弟である忠輝様を忌み嫌っていたと聞く。
自分からすれば、兄弟が居るのは羨ましいことなのに。事態はそれだけでは収まらないようだ。
「い、家光も、上杉には期待ししる」
「感謝致します」
そうだその時は、見せ付けてやればいい。これが上杉の「義」だ、と。