上杉主従
 直江景明*千徳


※よくわからない話



一人ぼっちの若君様。
齢ひとつで母を亡くし、みっつで親許故郷と離され、ななつでその名を改めさせられた若君様。

「平八、」
「私は貴方を道連れにしたい。それが例えどんな道であろうとも」

「思い通りにならないこの身体が、一番恨めしい…!」

腕に押さえつけた痣を残し、首にも赤く痕を付ける。触れる度にびくりと震えるこの身体に、あと何回触れられるだろうか。
もう少ししたらまた引き離されてしまう。もっともっと、傍に居たいのに触れていたいのに。

「行かないで、行かないで平八…」

その願いを叶えられたら、どれほどいいだろうか。
縋り付く手は自分と比べたらもちろん小さくて、でもこの手に背に、たくさんのものを抱えて生きていかなければいけない。
この方をこの地に縛り付ける徳川が、何より憎らしい。あんな決まりさえ無ければ、すぐにでも連れ帰ってしまうのに!

「喜平次様、喜平次様」
「やだよ…」
「私も、同じ気持ちです」
「我はいつ米沢に帰れる?平八はいつ此処に来れる?」
「徳川が、ただただ憎らしい」

先の見えないこの身体、一体いつ動かなくなってしまうのか。もしかしたら明日には、ぴたりと動きを止めてしまうかもしれない。
それならこの方を道連れにしてしまいたい。歪んだ考えなのはわかっているけれど、それくらいこの方を離したくないのだ。



貴方に兄が居たら、弟が居たら、姉が居たら、妹が居たら―――


私は貴方を殺したのに



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