上杉家
 上杉季信+直江景明*上杉定勝←松木秀貞


「あー!主計殿狡い!」

秀貞の目の前には仲良く手を繋ぐ定勝と季信の姿。百歩譲って景明は良いとしても、新入りの季信に定勝の隣を取られるのは面白くない。

「秀貞?」
「内匠殿じゃないですか」
「定勝様、俺も手繋ぎたいな」
「別に構わないが…」

ほら、と差し出された体温の低い定勝の手を優しく受け取り指を絡めていく。秀貞が嬉しさに鼻歌を歌えば、横に居る定勝が笑う。

「秀貞、そんなに嬉しいのか?」
「もちろん」

定勝が笑えば秀貞も季信もつられて笑う。
しかしそんなことも束の間、定勝の視界にある人物が入った瞬間、秀貞は舌打ちした。

「平八っ!」

繋いだばかりの手をほどかれ、定勝は景明に駆け寄る。季信がちらりと横を向けば、秀貞があからさまに嫌な顔をして景明を睨み付けていた。

「只今戻りました、喜平次様」
「いつ戻ったんだ?」
「つい先ほどです」
「体調は大丈夫か?無理は駄目だからな」

定勝にとって景明は特別だから、仕方ないし今更といえば今更な話なのだ。秀貞もそれは理解しているが、それでも景明に定勝が取られるのは気に食わない。
自分だって昔からずっと傍に居るのに。そう思わずにはいられなかった。

「定勝様、」
「どうした?」
「景明殿ばかりじゃなくて俺も構って下さい」

後ろからぎゅうと抱き付き、幼子のように甘えてみせる。どうだ、と言わんばかりに秀貞が景明を見れば、景明が若干苛立っているのがわかる。

「じゃあ私もー」
「季信殿も?」
「では私は後ほどじっくり構っていただきます」
「う、うむ」

丁寧に頭を下げ立ち去って行った景明に、秀貞は勝った気分でいる反面何かありそうな気がして気持ち悪かった。それでも、今勝ち取ったのは自分なのだととりあえず素直に喜ぶことにした。
季信は相変わらずにこにこと笑うばかりで、実は一番油断ならないのはこいつじゃないのか。そんなことを考えていた。



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