伊達主従
梵天丸→片倉小十郎
あぁここで、私はやっとこの一生を終われるかもしれない。
そう思って私はあの時、少し嬉しかったのだ。
「よかった…」
でも死ぬことは出来なくて、またこの地獄を味わうことになって。泣けるものなら泣いてしまいたかった。
きっとこんな時に、人は泣くのでしょう?
「どうして泣くのですか?」
小さな手が私の着物をきつく握りしめ、ひとつしかないその左目から大粒の涙を零す。
捨ててしまった感情。私は泣くことが出来ないから、理解が追い付かない。
「死んでもいいと思った、でも死ななくてよかった」
「何故?」
泣きながら、貴方は笑う。
「お前を死なせなくてよかった」
「だから今度は、梵天の番だ」
暗い暗い底無し沼に一本の糸。
それは始め、頼りない蜘蛛の糸のようだった。