高山と細川
高山右近→細川忠興
「ねぇ、忠興君」
「なんだ」
「例えばの話でね、明日から戦も飢えることもない天下泰平の世の中になったら、どうする?」
そうこれは、例えばの話。
「玉とずっと一緒に居る」
迷うことなくズバリと彼は言ってみせた。その一言は、あまりにも単純明解そのもの。
そして実に彼らしい答え。
「高山は、」
「え?」
「高山はどうしたい?」
いきなり自分に振られ、自分自身はあまり考えたこともなかったことに気付く。
天下の流れがどうなろうと神に祈りは捧げるだろうし、きっと何も変わらない。
「…忠興君とお茶が飲みたい、です」
「さっきも飲んだだろう」
「それでもです」
別の答えもあるけれど、それは口に出さないで秘めておこう。例え話でも、これは言わない。
「あぁ、貴方の演じる能を観るのもいいですね」
「俺のは高いぞ」
もし口にしてしまったら、彼はどんな顔をするだろう。
(毎日、忠興君に逢いたいです)
でもそれは例えばの話。
今このままで充分だから。