徳川と丹羽
 徳川家光+丹羽光重


「赤い、目」

隔世遺伝で現れた彼の目は、弟を思い出して吐き気がする。織田譲りの赤い、目。

「た、忠長みたた、嫌い」

はっきりそう告げれば一瞬その赤い目を丸くして、にこりと笑ってくる。
でもその目元は柔らかい、やはり親子だから彼の父に似ている。

「うちの父も織田様の血を引いてはりますから、仕方あらしゃいまへんわ」
「確かに、か、可能性がないわけじゃなな」

自分の母も織田の血を引いている。だから弟にもそれが現れて赤い目を持っているのだ。
彼の父も織田の血を引いている。必然といえば、必然だ。

「…丹羽……ち、父上が気き入ってた、家」
「目を掛けてくだはりました節は、誠に感謝の言葉もありまへん」

父は殊に丹羽のことを気に入り、何かとさりげなく贔屓にしていた。わからない人にはわからないが、知る人には明らかだった。
その丹羽の、現当主が彼だ。

「更には一字まで賜りまして、」
「丹羽左京大夫」
「はい」

奥羽の要所白河から二本松へと移され、この自分の偏諱を受けた彼は再び緩やかに笑う。

「奥羽の柱とてて、期待ししてる」
「その期待に答えられますよう、努力しはります」

会津には幸がいる、米沢には定勝殿、仙台には陸奥殿、江戸近隣には六人衆を配置している。

「何かああば、幸に…ほ、保科肥後に言うといい」

「自慢の弟だ」

これで徳川も安泰だろう。あとは、自分の手足たちが自然と動いてくれる。
彼は再び一瞬だけ赤い目を丸くして、その後ゆっくりと頭を下げた。



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