清野と上杉
清野長範+上杉定勝
――切支丹53名、殉教
「…ねぇ清、」
声が僅かに震えている。雪も穏やかに降り続け、寒さは一層厳しくなるがそれによって震えているのではないだろう。
「父様なら、どうしただろう…?」
幕命には逆らえない。今まで隠して来たが、それも弾圧が激しくなってしまっては限界がある。
小さなその背に、たくさんの死を背負い彼はまた歩く。母を亡くし、父を亡くし、家臣や民もやむを得ず亡くしてしまい、泣いてもいいはずなのにそれもない。
「わかりません」
「続なら、わかったかな…」
本当は隠していたかったのだろう、でも上杉の家の為にはこうするしかなかった。改宗を勧めることもした、処刑を避ける方法も探した、でも事態は変えられなかった。
結局は無力だった。
「定勝様、」
でも無力だったのはこの方ではない。誰もが、無力だった。
後ろからゆっくりと抱きしめるが、その時漸く肩も震えていることに気付く。
「甘糟……甘っ…!」
まだ年若いこの方には、苛酷な現状に映るだろう。だって人が争い合う戦を知らない世代なのだから。
――寛永5年12月18日、北山原他にて殉教