長尾義兄弟
 長尾景虎*長尾政景


人間という生き物は、一人では生きていけないとか言う割には結局いつも一人だ。では他の生き物、例えば虎なんかはどうなのだろうか。

「景虎様、」

「……景虎殿、」

少なくともここに居る虎は、寂しがりやで到底一人で生きていけそうにはない。でもこの虎は色んな顔や側面を持っているから、もしかしたら一人でも平気かもしれない。

「まだ、もう少し」
「さっきもそう言った」
「だって上田に帰っちゃうんでしょ、だから」

後ろから抱きしめられ、かれこれどれぐらい時間が経っただろう。嫌なわけではないが、実に不自由だ。
ふわりと時折触れる髪がくすぐったい。

「どうせまたすぐ呼び付けるのだろう?」
「う…」
「心配しなくともきちんと出て来る」
「…うん」
「だからそんな顔しないでくれないか」

置いて行かれる子供ような顔をして、こちらを見つめる視線が痛い。不安でいっぱいな、そんな目だ。

だから出来る限り柔らかく笑って言ってあげよう。
(大丈夫、もう貴方の敵にはならないよ)



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