阿部従兄弟
 阿部忠秋+阿部重次


「見たな、小平次」
「あぁ、作十郎も見たな」
「もちろん」

殺されるかもしれない気分でやって来た。ここに入る前のあの人は、父親である大御所様ですら手をつけられないほど荒れていた。
何が起こるかわからない、だから二人で派遣された。一人だと万が一逃走でも図られたら対応しきれないからだ。

「「駿河大納言忠長様御自害」」

家光様から上野高崎に行けと言われたのは、どれほど前のことだろう。時間感覚すら狂いはじめたこの空間は、驚くほど穏やかだ。

「作十郎、」
「なんだ」
「これで良かったんだよな」
「あぁ…家光様の治世に、この方は歪みを入れてしまう」
「家光様は、忠長様を背負って生きるんだ…」



蒼紅の瞳は静かに閉じられ、隔世遺伝的な織田譲りの顔は皮肉なほど綺麗だった。



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