武田と上杉
武田勝頼+上杉景勝
※パロというかとある設定での話
「待って」
「誰だ」
掴んだ腕は恐ろしく冷たくて生きていることを疑うほどだった。でも今は彼に道を聞くしか方法がない。
「諏訪四郎、ここは裏手だろう?どうすれば表に戻れるのか教えて欲しいんだ」
「…客人か」
「そんな感じ」
武田勝頼と名乗らなかったのは何故だったのだろう。自分でもよくわからない。
ニコリと笑ってそう言えば、彼が掴まれた腕をジッと見つめるものだから慌ててその手を離す。
「この廊下の反対側、それをあちらに進み左手に曲がる。渡り廊下を渡り、さらに道なりに進めば表だ」
冷たい手がゆっくりと流れ、道筋を説明していく。白くて、冷たい綺麗な手。
「貴殿名前は?」
「…長尾、顕景」
彼は掴まれた腕をまじまじと眺めていたけれど、そんなに強く掴んだつもりもなかったから赤くはなっていなかった。
丁寧に頭を下げ、もう一度笑ってみせる。
「ありがとう」
彼の表情は相変わらず変わらなかったけれど、小さく頭を下げてくれた。