結城と上杉
 結城秀康→上杉景勝


※上の続きっぽいの



「本当に、上杉殿と刃を交えることにならなくてよかった…」

胸を撫で下ろした気分でいっぱいの秀康に素っ気なく「そうですか」と景勝が返せば、すかさず秀康が景勝との距離を縮める。秀康からすれば、いつも景勝にぴたりとくっついている兼続が都合のいいことに今は席を外しているのだ。
景勝に触れるほど近づいた秀康はその途端表情を曇らせる。

「父が貴方と戦うのなら、中立に立とうとさえ思った」

「貴方を傷付けたくなかった」

秀康にとって景勝は憧れだった。

父に嫌われ徳川の家からも出された身からすれば、家にも兄弟にもこれといった思い入れはなかった。だから必ずしも家康の味方になろうとは思わなかったし、ただ流れでそうなっただけであって本当はあまり関わりたくもなかった。
上杉と戦うことはしたくない、佐竹と同じように中立に立とうと思っていた。家康と秀忠が西へ行き秀康が東へ留め置かれた時、秀康はこの現状から逃げ出してやろうかとさえ考えた。

「結城殿、我はそんなに弱くない」
「知っています、知っていますでも…!」
「貴殿は心配性ですね」

ふわりと柔らかく触れて来た景勝の指に、熱を奪われるような感覚。それを感じて秀康が顔を上げればかち合う視線。
景勝の表情はほとんど変わらないけれど、嘘を並べられるよりずっとましだった。

「上杉殿が相手なら、いくらだって心配します」
「…ありがとう」

小さく小さく景勝が笑ったのを見て、秀康は思わず景勝を抱きしめてしまった。嬉しかったのか悲しかったのかは、本人にもよくわからなかった。



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