保科親子
 保科正之+保科正経


雪にもう触れられなくなってしまった。もうその姿を見ることさえ叶わない。


「嘘、だよね…?」

「だって…綱勝殿、この前も大丈夫だから、って言って…」

父が首を横に振るのが、幻覚であって欲しかった。認めたくない現実を突き付けられ、僕は声を荒げる。

「どうして!?どうして綱勝殿なの!?」
「…正経、」
「ひどいよ媛姉…どうして僕から綱勝殿を取り上げるの…!」
「綱勝殿は少し前から体調を崩し、それが一気に悪化して亡くなった」

ずっと憧れていた正頼兄上を亡くしてから、僕はずっと綱勝殿を追いかけていた。強くて綺麗で白い、米沢の藩主。そして、僕の義兄上。
媛姉に当たるのはお門違いな話だということは、自分でも十分理解している。それでも、どこかにこの感情をぶつけなければ狂ってしまいそうだった。

「誰も悪くない」

「…綱勝殿には嗣子が無い、どうするつもりですか父上」
「問題はそれだ…媛姫の事件は、正直言って保科家によって起こされたもの」
「無関係に巻き込まれた上杉家の取り潰し、阻止出来ますよね?」

無理なことを言っているのは百も承知の上だ。いくら末期養子の禁止が昔より緩和されたからと言って、跡継ぎ無く急死した痛手は大きい。
父が家綱様の叔父だとしても、無傷には済まないだろう。

「善処はする、上杉は潰さない。でも、削封は覚悟してもらう」
「僕も、出来ることがあるなら何だってする」

綱勝殿。貴方が誇りとしていた上杉の家は、この保科家が何としてでも守ってみせます。これが貴方への恩返しです。
(だから、だからもう一度、)



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