長尾義兄弟
長尾景虎*長尾政景
※いろいろと曖昧
初めは人じゃないかとまで思った。雪みたいで、きらきらしてて、でも誰より愛されていた人間だった。
気付いたら彼は自分の義兄で、驚くほど近かった。
「政景殿っ」
「…景虎殿…?」
姿を見つけると同時に近付いてすかさず取った手は相変わらずひやりと冷たくて、思わず口付けた。
嬉しくてこちらが笑えば、何をされたのか遅れて理解した彼が顔を赤くして怒るのだ。そんなことしても可愛いだけなのにね。
「な、何をしているかわかっていらっしゃるのですか!?」
「だからその喋り嫌だってば、固っ苦しい」
「しかしっ、」
「やーだ」
思えば"様"を"殿"にしてもらうにも時間がかかった。いくら身分の上では仕方のないこととはいえ、何となく嫌なのだ。
たったそれだけで、二人の間に壁があるような気になる。
彼の長い髪をくるくると指に絡め、有無を言わせない笑顔を見せれば観念したのか小さく溜息をついた。
「…もう少し、自分の立場を考えてくれないか」
「政景殿が好きだから無理かな」
「よくもまぁすらすらとそんなことが言えるものだ」
「本当のことだから仕方ないね」
彼の前だとつい口が滑る。思ったことが、言葉が次々に零れ落ちてしまう。止めようにも止められない、だって彼が好きだから。