上杉義兄弟
 上杉景虎*上杉景勝


嫌だ嫌だ嫌だ。
あんな奴になんか渡さない。付き合いの長さなんて問題じゃない、血の繋がりを持たない他人の中で今一番彼に近いのはこの俺だ。

「お願い、喜平次」

白い喉を少しずつ少しずつ絞めていく。でもやっぱり嫌になってすぐ手を放した。
自分はどうしたいのだろうか。彼を殺したくはないはずなのに、失いたくないはずなのに。

「…もう、いい…から」

どうしてそんなに泣きそうな顔するの?今俺は君を殺してしまいそうになったのに、それなのにどうして。

ゆるゆると触れて来た彼の手は、冷たかった。でもその手があったから、自分が泣いていることに気付いた。

「泣かないで…義兄上…」


「ここは、一人じゃ、ない」

そんなに警戒して武器を構えなくても、大丈夫だから。そう言った彼は誰より自分以外を、いや自分ですら警戒していた。
一人じゃないと言いながら、結局は一人なんだ。それは少しだけ、似ているからわかるよ。上部だけでもその言葉が欲しかった、だから君がくれた。

「君は、俺に優しすぎる」
「そんなこと、ない」
「もう少しその優しさを、自分に向けてごらん」

いつになったら君は、自分を許せるようになるのかな。
彼は俺に手を伸ばしてくれた、俺ももうすぐ彼の手を取れるよ。でもきっと繋いだその手は、ひどく頼りないものだ。



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