井伊と伊達
 井伊直孝+伊達秀宗


父親は苦手だ。何故だと言われてもわからない、気が付いたら何故かあまり一緒に居たくなかったのだ。でも弟たちは平気である。特にすぐ下の弟は自分に懐いてくれている。
比較的望んだものは与えられた、自分から手を出さなくとも。

そんな中にひとつ、手を伸ばしたものがあった。

「秀宗、暇か?」
「暇じゃ」
「手合わせしてくれ」

そう言うなりすらりと出された刀を見て相当疼くんだな、と思った。
時々こうして何の前置きもなくふらりとやってくることがある。そんな時は大概気分転換したいのか大層暇な時だ。

「腕が鈍る」
「そないなことないと思うがのぅ」
「…まぁ、いろいろあるんだ」

表情や言葉には表れないが、付き合いの長さからいって何が言いたいのかはわかる。きっと今日は周りに何か言われたのだろう、兄に会うと言っていたから。
自分が大きな自らの得物を構えれば、少しだけ口角が上がるのがわかる。

「流石直孝やの」
「あぁ」
「加減せぇへんで?」
「もちろん」

どうして皆彼を遠ざけるのだろう。
怖くなんかない、ただ不器用なだけでずっとずっと優しい。

似てはいるが彼は自分とは違う、そんな気がする。



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