清野と上杉
清野長範→上杉景勝/清野長範+上杉定勝
貴方は僕を可愛がってくれる。でも本当は僕の方がずっとずっと貴方を好いていて、もっと近くに居たかった。
「片手で構わないです」
「それを僕に下さい」
両手、とは言わない。そりゃあくれるならばもちろん欲しいですが。
でもひとつは彼にあげてしまうのでしょう?だから残った片手を僕に下さい。
「…この手は、もう残っていない」
「ひとつは昔に義兄上が持って行ってしまった」
「じゃあ、」
「もうひとつも、もう決まってしまっているのだ」
小さく小さく笑った貴方は、それでも満足そうだった。
貴方が幸せならそれでいい。
貴方が悲しまないなら、それだけで。
「清、江戸へ向かう」
「わかりました」
貴方はもう居ないけれど、貴方が残してくれたものがあるから。
貴方と比べたらよく話すしよく笑う。でもね、やっぱり親子だからそっくりです。
「上杉が、義を」
ほら、ちらりと見える横顔に貴方の影が重なる。
僕は今でも貴方が好きだから、貴方の残してくれたものを守る為に存在します。