徳川と丹羽
徳川秀忠*丹羽長重
目が好き、彼はそれを遺伝だと言った。だから兄弟も親戚も皆同じく、この丹羽の目を持っている、と。
訛りが好き、彼はそれも父譲りだと言った。彼の父は何度か見掛けたことがある、その時少しだけ聞いた、確かに同じだった。
じゃあ彼自身は何があるのだろう。
「五郎左、」
「なんやろか」
「君は、何だろうね?」
意味がわからない、とでも言った風に首を傾げる。まぁ質問が唐突過ぎるといえばその通りだ。
そんな表情を眺めながらぱくりと団子を頬張り、もうひとつを彼にし出す。手を出そうとしたからそれを押さえ口に持って行けば、諦めたのか大人しく口を開く。
「さぁ?わからへんなぁ」
「そういえばこれどうしたの?」
「あぁ、石段踏み外しただけや」
もぐもぐと口を動かすのを見つめ、暫くした後ちらりと覗いた左足を指差せば捻ったのかくるくると巻かれた白の包帯が目に付く。
「…なんで」
「長正がなんや真面目に稽古してはるから、邪魔しないように思たらやらかしましたわ」
そういえば何かと不運属性なのは彼の特徴かもしれない。通り雨には当たるし通行人にはよくぶつかる。
溜息をついたらからからと笑われ、またひとつ団子を口に放り込む。
「心配しすぎや」
「君は、もう少し気にした方がいい」
そのうち心配しすぎてこちらが倒れそうだ。