樋口と長尾
 樋口与六+長尾顕景


背がじくじくと痛む。
思い出すだけで吐き気がして、立っているのも辛くなりそのまま床に膝をついてしまう。くらりと目眩がしたと思ったら、心配そうな声が聞こえる。

「顕景、様…?」
「…与六?」
「ま、またっ…お身体の調子が、良くないのですか?」
「問題、ない」

オドオドと慌て近寄る姿に小さな安心感を抱き、平気だと言ってみせる。
本当はどうしようもなく背が痛んで何をするのも嫌なのだが、こんな自分でも心配してくれる人が居る。そう思うと少しは気持ちが軽くなる。

「…父が居たら、止めてくれただろうか」
「え…?」
「独り言だ」

いつの間にかぎゅうと握られていた手はその体温でゆっくりと温められていく。軽く頭を撫で、心配するなと言えば更にぎゅうと握られた。
小雨の降る夕暮れだった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -