蜂屋と丹羽
蜂屋頼隆+丹羽長秀
「義兄上、義兄上、」
「…頼隆はん?」
通りかかるのが見えたから追いかけて、すぐに呼び止めてそのまますかさず腕を掴んだ。
それに普段なら周りに小さいのやら大きいのやらがくっついているのだが、今日は珍しく一人なのだ。
「どないしはりました?」
「義兄上は今日もお綺麗ですね」
「頼隆はんも元気そうで何より」
にこりと笑う義兄上は本当に癒しだと思う。そしてこんな方を義兄上と呼べる自分は正直果報者ではないだろうか。
不意に義兄上がくしゃくしゃと僕の頭を撫で、また綺麗に笑う。
「あ、にうえ…?」
「あまり無理したらあきまへんえ?」
「それは、義兄上こそ」
織田四天王の一人で、柴田様と一緒の双璧で、遊撃軍の主力部隊。城の普請も船の手配もきちんとこなし、それでいながら立派に槍働きもしてみせる。
欠点も知っている。それでも義兄上は憧れの一人だった。
「お気を付けなされませ」
「何をや?」
「いつか、誰かが貴方を苦しめる」
「?」
「妄言だと笑ってくれても構いません」
風に揺れる長い髪を一房掬い、ゆっくり口付けた。いつも通り、いい匂いがする。
するとくすくすと笑う目の前の人に思わず目眩を覚えた。えぇ、敵いませんよ。
「ふふっ、変な頼隆はんやなぁ」
例え誰かの所有物だとしてもいつまでも笑っていてくれるのならば、それもひとつの手段として構わないのかもしれない。
(でも義兄上、貴方が好きです)