上杉夫婦
 上杉綱勝*媛姫


「お母様は気にしていらっしゃるようだけれど、私は今すごく幸せよ」

ふわふわと綿菓子のように柔らかく笑う彼女は、文字通り幸せそうだった。
腹の違う妹の方が、ずっとずっといい家に嫁ぐことを知っても彼女はそれを心から祝福した。それはこの家に気を使ってのことではなく、本当にこの家の方が好きらしかった。

「これで貴方様の御子が産めたら、もう何も言うことはないわ」
「じゃあ我は、君に何をしてあげられるかな?」

心地良い風が頬を撫でる。
彼女がこの家を好いてくれて本当によかった。この家は、自分の誇りだ。

「私よりも長く生きて下さいませ」
「絶対約束する、とは言えないな」
「貴方様らしいです」

そう言って満足そうに笑う彼女を、誰よりも愛していた。
もしかしたらあの時が一番幸せだったのかもしれない。



約束は守ったけれど、彼女の居ない世界は生きられそうにもなかった。



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