阿部と松平
阿部忠秋+松平信綱
大切なものが、ずっと傍にいたものが少しずつ無くなっていく。
この手から、零れ落ちていく。
「お前はっ、これからも必要な人間だ…!」
「何、言ってる…だ、」
「出来ることなら、俺が代わりに死んでしまいたい」
時代の流れに乗れなくて置いて行かれた、憐れな人間だ。必要とされなくなって追い出されるのもあとは時間の問題。
「ばか、だなぁ」
小さく笑うけれどそれすらも辛そうで、でも何もしてあげられない自分がここにいる。
静かに泣いた彼を見て同じように自分も泣いた。
早く皆に会いたい、残されるのはもうたくさんだ。