徳川と保科
徳川家光+保科正之
「島原の件だた、」
「長四郎を名代とてて遣わす」
「わかりました」
「幸は、く国に帰れ」
「はい」
手が震える。顔が緩むのを必死に抑えて部屋を出た。
傍に侍る家臣達は残念そうな顔していたけれど、僕は反対に満足げに笑ってあげた。
「残念でしたね…名代は殿とされていましたのに」
「何言ってるんだい」
「え?」
「僕は東の押さえだ」
「それだけで十分すぎる」
西に変事ありし時は東にても同様の事態が起こり得るだろう。かつての天下を分ける戦の時のように。
そう言っていたのは祖父か、父か。
だから嬉しくて嬉しくて、飛び上がってしまいそうだった。だってあの兄上が、誰でもない僕を選んでくれたのだから!