織田と丹羽
織田信雄+丹羽長重
父を見て育ったけれど、当の父はいつもふにゃりとゆるく笑うだけで、優しい人だった。
でもその優しさを踏みにじったのは、自分の都合の良いように利用したのは、紛れも無くあの人だった。
「どないな立場でも、状況であらしゃいましても、」
「丹羽は織田に刃を向けまへん」
父から受け継いだ、一種の誓いにも似たそれは周りから見れば実にくだらないものかもしれない。現に織田は、あの頃とは大きく姿を変えてしまったのだから。
「随分と立派なことだな、五郎左」
「丹羽は、織田のために」
見上げた顔は、やはり織田の血を継ぐ人だった。
(丹羽の主は織田である、羽柴ではないのだ)
(そしてうちは、信長はんがおらんと駄目なんやわ)