上杉夫婦
 上杉定勝*市姫


雪が、降った。江戸で雪が降るのだから米沢はもう一面が銀世界になっていることだろう。

「市、」

そんな考えに浸っていたら久しぶりに聞いた声がする。一瞬自分を疑ったが、振り返ればやはり逢いたいと望んだ彼が居て、手には綺麗な華があった。

「定勝、殿…?」
「すまぬ、市を驚かせようと思って皆には内緒にしてもらっていたのだ」

相変わらずふにゃりと笑う彼が酷く恋しくて、彼是と考える前に抱き付いていた。
元々ひやりとしている手が更に冷たくなり、それを思ってか触れてくれないのがあまりにもどかしくてこちらからその手を取る。

「やはり、定勝殿の手は綺麗だな」
「市の綺麗さには負けるさ」

ゆっくりと触れて来る手は優しい。冷たいけれども温かくて、時々どうしようもないくらい恋しくなる。

彼が好きだ。だから彼の妻になれて良かった。
愛されているから、離れていても辛くない。


(でも、貴方が愛する米沢の地を私はまだ知らない)



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