徳川と結城
 徳川秀忠+結城秀康


突然、前を歩いていた者たちが左右に分かれ道を開けながら次々に頭を下げていく。何事かと首を傾げれば、やって来たのはすぐ下の弟だった。

「秀忠?お前、何故一人でここに居る?」
「秀康兄上をお迎えに上がりました」

にこりと笑う弟は、自分の身分を理解しているのだろうか。仮にも徳川家当主、征夷大将軍に任ぜられた人間であるというのにこの油断極まりない態度。
もう一度何故一人なのかと問えば、途中で振り切ってきました、なんて笑顔で言う始末。

「迷惑だったでしょうか…?」
「迷惑、というよりお前に何かあると俺が殺される」
「そのようなこと、私が絶対にさせません!」
「しかしお前はもう徳川の当主で、俺はお前の一門ではあるが家臣なんだ」

気持ちというものは、相変わらず上手く伝わらないんだな、なんて思った。
(俺はお前が、心配でならないのに)
(取り残されてしまわないか、一人で走りすぎてしまわないか)



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -