真田と徳川
真田信繁+徳川秀忠
※11大きな河のパロ的な何か
「…おやおや、こんな所で貴方に会うなんて」
「ねぇ?徳川将軍殿」
赤。それだけで誰かなど簡単にわかる。真田信繁、彼しか居ない。
敵陣の真っ只中で彼と鉢合わせるなんて、今日はとことんついていない。交渉は決裂するし、ほぼ丸腰で具足姿の彼に会う。生きて帰ることだって難しい。
「出来れば、誰にも会わずに帰りたかったのですが」
「敵情視察ですか?貴方自ら」
「いいえ、少し用がありまして」
どうしたら良いかと頭を回転させるが、上手い答えは見付からない。焦れば焦るほどぐちゃぐちゃしてくる。
一歩、また一歩と彼が近付く。それだけで息が止まりそうになる。
「…戦は、戦場で」
すれ違う直前、彼は得物を利き腕とは逆に持ち直し私にそう告げた。
慌てて振り返れば彼は楽しそうに笑っていた。
「なっ…!」
「ある方に教えていただいたのです、決して義に背くなと」
「だから、貴方と戦うのはここじゃない」
彼の言いたいことが理解出来なくて、私は何も言えなかった。
今なら私を殺せた。今なら私を捕らえられた。そうすれば勝ちに近付けるはずなのに、なのに彼は何もしなかった。意味がわからない。
「それでは」
それが、彼と会った最後だった。