丹羽親子
丹羽長秀+蜂屋直政
「僕は、自分の目が嫌いです」
「どうして僕だけ、兄様たちと違う目なのでしょう」
前髪を伸ばしたのは、この目を見られたくなかったから。三人の兄は皆揃って父と同じ目をしていたのに、僕だけは母に似た目だった。
母を疎むつもりはないけれど、やっぱり父と同じ目に生まれたかった。
「父上と、同じになりたかった」
「…なぁ直政。父がこの前頼隆はんに聞いた話、聞いてくれはる?」
これと言って他に似ている部分があるわけでもない。だから余計に、それこそ自分自身が嫌いだった。
不意に父が切り出した話。僕はとりあえず小さく頷いた。優しい父の声が、好きだ。
「人間、自分の声ゆうもんは頭蓋骨に反響して聞こえるんやて。せやから自分が聞いてる声と、人が聞いてはる声は別もんなんや」
「それでな、この前頼隆はんが言うてはったんやけど、」
「直政の声は、うちの声と同じなんやて」
隣に座る父がぎゅうと抱きしめてくれる。僕は理解が追い付かなくて、まだ何も言えないでいた。
だって、僕の好きな父の声が、僕と同じ声だなんて。
「ち、父上…それは本当、ですか…?」
「頼隆はんは嘘つかへんから、そうであらしゃいますやろ」
優しく笑う父と違う目、でもこの声は同じ。
今は、それだけの理由でよかった。