松平と堀田
 松平信綱+堀田正盛


「長四郎殿っ、」
「…三四郎?」

やっと見付けた長四郎殿は、僕の憧れの先輩。

「これ、一通り作ってみたんですけど目を通してもらえますか?」

最近酒井様や土井様の近く、老中並として使ってもらえるようになったけれど、まだまだわからないことばかりの若輩者。その点長四郎殿は僕と同じ六人衆の所属でありながら、老中として仕事をこなしている。
考えて考えて、それでもわからないことは何でも聞いた。その代わり教えてもらったことはきちんと覚えてこなした。

手渡したのは今度の合議で使おうと思っている自分なりの意見。

「…私は、いいと思う。世代の違うお二方でなく、三四郎だから出せる意見じゃないかな」
「ほ、本当ですか!?」
「うん」

長四郎殿はいささか無愛想なのがたまに傷だけれど、褒める所は褒めて指摘する所は指摘してくれる。
今だってそう。ここの言い回しを少し変えた方がいいとか、例え話を加えて説明した方がわかりやすいだろうとか。より良くする為に一緒に考えてくれるのだ。

「三四郎は、努力家だね」
「長四郎殿が早歩きすぎるので、走らなければ追いつきませんから」

さらりとそう告げれば、彼は小さく笑った。
(早く早く、あの人の役に立てる人間になりたい)
(あの人が必要としてくれる、手足に僕はなりたい)



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -