徳川親子
 徳川秀忠+徳川家光


父も母も、正直どうでもよかった。

欲しかったのはたった一人の兄の隣に居る権利と、他者に左右されない確固たる地位、それと好きな人を振り向かせるきっかけ。
それ以外は要らなかった。

「せ、せっかく良いものの持っているの、で、でかからそげを…使えばよかかったのでは?」
「……ではお前は、それを使って彼を捕まえでもする気か?」

この跡継ぎの言葉は正直聞き取り難くて苦手だ。煩わしくて、時に苛立ちすら覚える。

「…し、しま、せせん」
「第一、兄上はそんなこと望まない」

こちらからそれ相応の幕府の地位をあげたとしても、兄は喜ばなかっただろう。だから、出来る限りのことをしていたんだ。
同じことをしたって、きっと彼も喜んでくれないだろう。

「もっと頭を使え、家光」

「私の手ももちろんそうだが、お前の手もそんなに大きくはないんだ」

欲張ったら、全て失うだろう。
だから、権利地位きっかけ、それだけでいい。



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