後藤と黒田
後藤又兵衛→←黒田長政
※大坂の陣直前くらい
「あんたのことは好きじゃないけど、嫌いじゃなかったよ」
そう言ったらまた殴られるか意味がわからないと怒られるんだろうなぁ、なんて思いながらも言わずにはいられなかった。
通じなくても、届かなくても、声にしただけでいい。
払われると思いつつ伸ばした手は、抵抗されることなく髪に触れた。同じ色の、同じ質感の、髪。
「…お前の言っている意味が、掴めるくらいにはなった」
「へぇ」
回りくどいんだ、お前の言葉は。
空いている手を掴まれ、ゆっくりと指を絡めていく。
手の大きさは、自分の方が少し大きいだろうか。手の温かさは、彼の方が高いだろうか。
彼の全てを自分の中に刻み付ける。もう二度と、振り返らないから。
「又兵衛、」
「何ですか?」
一度何かを言いかけて開いた口を閉じ、そしてまた開く。
「次に会う時は、どちらが屍だろうな」
「あんたを殺すなら俺が仕留めたいね」
「ふん、出来るならやってみろ」
相も変わらず憎まれ口を叩く彼の首に手を添えた。
(これでいい、これでいいんだ)