徳川と保科
徳川忠長+保科正之
中途半端に奪われていく。
自分を愛してくれた父も母も、もう居なくて。たった一人の兄は自分なんぞ視界にも写したくなくて。
「お前も、あちら側の人間だろう?」
片手で数えるほどしか会ったことの無い弟も、すぐこの手から離れ兄の所に行くだろう。
今この手には、何が残っているのだろうか。
「兄貴はお前を大事にしてくれるだろうよ」
「だから、だから、」
どうか無力な自分の代わりに、あの人を支えてあげて
それだけが、最期の望みだから
奪うのならいっそ、声も全部奪ってよ
(悲鳴も助けも叫べないように)