徳川と上杉
徳川家綱+上杉綱勝
「今鳴るは、芝か上野か浅草か」
鼻歌混じりにそう言えば、彼はふわりと笑って首を傾げた。
「なんですか、それは」
「芝にある増上寺の鐘の話さ」
我ながら素晴らしい出来に仕上がったと思う。それは江戸の庶民にも理解されたようで、こんな川柳が詠われているのだとこの前教えてもらった。
単純に嬉しかった。自分が良いと思ったものを他の人も良いと思ってくれた。
「ぜひ、拝見してみたいです」
「播磨殿も今度一緒に行こうか?」
ついいつもの乗りでさらりとそんなことを零してしまったら、彼はきょとんとしてしまい現状が理解出来てないみたいだった。
まぁ、僕らはそんなに親しくも近くもないから、仕方ないと言えば仕方ない。
「そ、そんな恐れ多いです…!」
「あー…でも播磨殿を勝手に連れ回したら正経殿に怒られちゃうかなぁ」
だって会津の従兄弟殿は彼のことが好きだから。