「よろ…」

どうしようもなく、誰かに触れたい時がある
人が恋しくなるというのかなんなのか、自分には今だ理解が出来ないのだが

見付けた主が振り返り名前を呼ぶよりも早く、自分の元へと引き寄せぎゅうと抱きしめる

「どうした、与六」

しかも相手が主じゃなきゃいけないなんて、どれだけ不便な身体なんだ、これは
誰でも構わないのは困るが、主じゃなくてはならないのも正直困る

「幼子か、お前は」

ぽつりぽつりと聞こえて来る言葉、低い体温で触れる手、呆れる溜息も全て、何もかもが大切で

「それでも、構いません」

唯一、恐ろしいと思ってしまったのだ
他の全てを零し落としたとしても、この人だけはこの手から離してはいけないのだと

「顕景様、」

どうかどうか
貴方はこの手から滑り落ちないで
私の手は、全てを掬える程

大きくはないのだから









恋しい存在、それは



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