「その様子では、また何か直江殿に言われましたか?」

顔を合わせただけなのに、よくも一瞬でそんな所まで見抜けるものだと感心せずにはいられないが、自分も似たようなものだとはたと気付いた。
お互いのことがまるで自分のことの如く、手に取るようにわかるのだ。

それにしてもそんなに不機嫌そうな顔をしていただろうか。なるべく表に出さないようにしていたのに。

「まぁ、少し…」
「殿は感情に素直過ぎるのです」

ゆっくりと己の手を取るその仕種は、あまりにも綺麗で見惚れてしまいそうで。そして僅かに触れるだけの口付けをする。

確かに己は時折気が短い所がある。これが上杉の直江に対してならより一層。
はっきりとした物言いに皮肉を加え、人を逆撫でする言動、その全て己と反りが合わない。

「でもそれが良い所でもありますが」

ふわりと笑うその姿を見てしまっては多少の機嫌の悪さも収まり、もう先程までのことなどどうでもいいかとさえ思える。
贔屓目も少なからずあるだろうが、天下の三陪臣と謳われる二人であっても、こんなにも違うものかとひしひし実感する。


「俺には、お前じゃなければ駄目みたいだ」









お前以外は無理だ



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