※景明*定勝前提の家光→定勝
※家光がどうしようもない
いけない。それは言ってはいけないことだと、頭ではわかっているのに。
何がきっかけだったのかはもう覚えていない。ただ気付いたら自分よりも小柄な彼の腕を掴んで、壁に押し付けていた。
突然のことに状況理解が追い付かない彼は不安げな目をしていた。
「家、光様…?」
「…どうして定勝殿は、家光のことと見てくれない?」
「何を、」
そして口を開いたのが更にいけなかった。いつものように言葉を飲み込んで、謝ってふにゃりと笑えば彼は許してくれたはずだ。でも止められなかった。
彼の腕を掴んだままの手に余計力が入る。
「いいつまでも君は直江のここばかりだ」
「それはっ…」
「過去に想いを馳せるばかりでて、君は現在から目を背けけいる」
「直江景明は死んだんだ」
更に言葉は止まることを知らず、次々に零れ落ちて行くばかり。
その全てが、彼を傷付ける。
(離したくない、渡したくない、ねぇ家光だけを見て!他の人なんてその目に映さないで!)
「君が言う「平八」はもう死者だ、何故それを受け入れられない?」
「…違います…認めていない訳では、ありません」
「しかし、定勝殿は直江景明を忘れれれないのでしょう?今も恋い焦がれているのでしょう?」
「……」
「もっど早く、ここ家光のものにしてしまうべきだった」
抑えられなくて、まるで噛み付くように強引にした口付けは、その通り血の味がした。
君は毒薬、
零れた言葉と同じで伸ばした腕を戻すことも出来ない。
家光は、定勝殿が好きなのです。
しかし君はいつまでたっても死んだ直江のことしか見ていない。
だから君は家光を狂わす毒薬。
その毒を飲み干すことさえ厭わないから、いつか家光のものにしてみせよう。
(待つのは嫌いじゃない、でもね、物事には限界があるんだ)
生憎解決の術は持ってない