※政宗のみで小十郎死ネタ
ぼたりぼたりと不意に無いはずの右眼から、真っ赤な血が零れ落ちた。痛みはさほど無いがじわじわとは小さく痛む。
ほんの一瞬、理解出来なかった。意味が、わからない。
でもそれは右眼を再び失ったということを表していて、直ぐさま合点がいった。
「散った、のか…」
重綱は既に白石に帰している。
きっとまた病気なのに怒って、それでもやっぱり心配はしていて。真田の娘を連れ帰ったなら、どんな顔をするのだろうか。
最後に逢ったのは、もう一年以上も前。
『…重綱、は、きっと…貴方の役に、立ちます…だから、』
満足に身体を動かすことも出来なくて、言葉を発するのも大変そうで。なのに何も出来ない自分があまりにも憎らしくて。
ただ失うのが恐かった。
『…どうか…あ、の子に、先陣を――』
精一杯、無理をしてまで笑う姿。
使い物にならなくても無理矢理連れて来るのと、少しでも良くなるように置いていくのと、あの時この手で殺してしまうのと、どれが一番良かったのだろう。
――結局、置いていくことを選んでしまったのだけれど。
どくどくと流れる血は、まるで紅い涙みたいだ。
(あいしていました、あいしています、あいしてください)
半分持って行かれたみたいだ