※徳川sideで家光と信綱



江戸から京まで、一体何日ほどかかるのだったか。しかし事は江戸と京の往復だけではない。
途中駿府や伏見にも寄り、参内するまでにも用意やら何やらで数日かかる。

その間ずっと将軍としての顔をしていなければいけないのかと思うと、何より疲れるし気が滅入る。
考えれば考えるだけ、鬱だ。

「…う、上杉を、連れて行きたたのだが」

でも彼さえ居ればそれだけで少なからず気が楽になる。同い年の米沢藩主、上杉定勝。
彼の前ならば素の、ただの徳川家光で居られる。

はっきりと名前をあげたなら、信綱はゆっくりと口を開く。まるで、始めからそう言われることをわかっていたかのように。

「まぁ外様の中ならば、上杉か前田が適任でしょうね」

その言葉に自然と顔が緩んでしまう。

先々代、軍神とも謳われた謙信公の代から変わらぬ義を貫き続ける上杉家。外様という言葉が少々耳に痛いが、それも己が義を信じた結果。
国を、民を、守ろうとしたから。

だがそれは自分がこの世に生を受けるよりも前の話で、聞いただけの本物を知らない事実。

「では上杉を、将軍守護とてて共に上洛を」

だから見せて下さい。

そこに義があるのなら、君はこの家光の為に動いてくれるでしょう?








利は彼の手に、義は我の手に



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